お母様ががん罹患され、お辛い状況であろう中、ご質問いただき、ありがとうございます。
産業カウンセラーとして、そして「がんサバイバー」としてがんを経験した立場からご相談にお答えしたいと思います。何かお役に立てれば幸いです。
まず個人差はあるかと思います。
やはり「こうしたコミュニケーションをとると良いよ。どんな方にも合うよ」という特効薬のようなものはなかなか無いのではないかと思います。同じコミュニケーションをとっていても、この方にとっては嬉しいけれど、この方にはちょっとそれは辛い、ということも時にはあるかもしれません。
ですから、最大公約数的に、例えばですが、「ありがとう」と言われて不快な思いをする方は少ないというように、「ありがとう」「感謝をしています」など、どなたが受けても一定の効果があるような、そんなコミュニケーションのヒントをご紹介できればと思います。
まず、お母様をはじめ家族が病気になってしまったといった場合に心得ていただきたいのが、「本人の気持ちを第一に考えてほしい」ということです。
例えば私には妻がいますが、もし妻が病気になってしまったら、私はきっと焦ってどうして良いか分からなくなってしまうでしょう。そんな感情から、手あたり次第妻にとって良さそうなことを薦めてしまうかもしれません。
でも、そうではなく、まず妻自身が今後どういう人生を送りたいのか、妻自身が今どういう気持ちでいるのか、何に困っているのか。そういったことを最初に聞いてあげるとか、「今の思いを良かったら聞かせてくれないか」ということを話していく、そういうことが大事なんじゃないかなと思います。
それを踏まえて、自分がどう行動すべきかを考えていくことが大事なのではないでしょうか。
また、接し方についてですが、これもやはり周りがあまり不安がってしまったり、逆に高圧的に「俺がいるから大丈夫だ」みたいな、そういった気持ちがあると、受け手としては「自分の気持ちよりも相手に合わせなければいけないのかな」という風に思われかねませんので、出来るだけ普段通りに、まずは相手の気持ちに寄り添っていきたいという姿勢を見せていく。そういうことが大事なのではないかと思います。
例えばお母様が主婦である可能性もありますよね。そうなると、家事や育児など普段やっていたことが出来なくなる可能性もあります。
そういった場合に「大変だから無理しなくて良いよ! 休んでいて!」といったメッセージが有り難いようで、意外と本人は苦しかったりします。
私も経験があるのですが、「何もしなくて良いよ」と言われても出来るときもありますし、本当に辛いときもある。
逆に何もしなければしないでどんどん体も弱っていきますし、「自分が頼りない存在なんじゃないか」とか「お荷物なんじゃないか」という風に思うことも、実際にしばしばありました。出来ればあまり過保護にはせずに、本人が「これはやるよ」「今日は頑張れるよ」ということであれば、それはもう「じゃあ、お願いね。ただ何かあったら声掛けてね。無理はし過ぎないでね」と、そんな声を掛けて本人の自主性に任せるのが良いのではないかなと思います。
どうしても責任感の強いお母様やご家族の方ですと、ついついやり過ぎてしまうことがあるかもしれない。そこはやり過ぎているようだったら「大丈夫?」と声を掛けてちょっとセーブするような促しなども必要かもしれませんが、「何もしちゃいけない」「何もしなくて良い」「寝てなさい」なんて言われてしまうと逆にストレスがかかってしまうことがあるので、そこは避けた方が良いのではないかと経験上感じています。
そしてもう一つ。普段からおうちの皆さんもおっしゃっているかもしれませんが、例えばお母様に対して「何か出来ることがあったらいつでも声を掛けてね」ということをこまめにお伝えする。なんてことがもしかしたらお母様にとっては嬉しいのかもしれません。
私の知人も言っていましたが、いつも頑張っているお母さんに対して、こんなときだからこそ自分たちが少しでも出来ることから支援をしようという気持ちが芽生えたそうです。
普段はいろいろ家事や仕事など負担を掛けすぎているなぁという印象をお持ちのようでしたら、少し声を掛けてあげるだけでもお母様にとってはその気持ちが非常に嬉しいんじゃないかなと思います。
また何かあればちょっとずつ負担を周辺の家族が抱えてあげる、荷物を背負ってあげる。そういったことが出来ると家族の絆もより深まってくるのではないかなと思いますので、ぜひ参考にしていただければと思います。
(了)
回答者:花木裕介(一般社団法人がんチャレンジャー 代表理事)