私のブログにコメントをくださる方は、圧倒的に女性が多いです。私は女性の立場に立つことはできませんし、男性側からの意見しか言えないのですが、その前提がありながら、やはり女性、特に「ご主人が罹患したという奥様」からの相談が多いのです。
これは何を意味しているかというと、恐らくですが、罹患した男性側があまり自分を語りたがらないことからくるように思います。私も、このように発信こそすれ、家庭内でどれだけ率直に気持ちや意思を伝えていたかというと、正直あまり話してはいなかったように思います。
また、女性側のほうが、ブログなどで情報を得ている割合が高いことも挙げられるかもしれませんね。私の妻もさまざまなブログなどにあたっては、「この人の書いている情報は参考になるよ」といって、私に教えてくれていました(それでも、私はあまり見ませんでしたけど)。
がん宣告されて本当は辛いはずなのに、この人は何も言ってこない。だからこそ、励ましたいが、どう接していいかわからない……という心境になるのではないでしょうか。
しかし、経験上感じるのは、極力いつも通り接してくれるのが一番ありがたいのではないかということです。もちろんある意味「非常事態」ですので、そんな悠長なことは言っていられないかもしれませんが、だからこそできるだけ自然体が、罹患者側としても安心できると思うのです。
がん宣告されると、その後主治医から病気の症状や治療方法等の説明を受けることになります。さらには、その病院で治療をするか、もしくは別の病院にあたるかを判断し、ようやく治療先が決まったと思ったら、今度は辛く、苦しく長い治療が待っています。
進行がんなら、これら命にかかわる判断を、限られた時間で即座にしていかなければなりません。これは私にとっても想像以上にきつい時間でした。家族で意見が合わないこともありますし、時に感情的になってしまうこともある。だからこそ、できるだけ普段と変わらない会話が逆に有り難かったりします。
それともう一つ。罹患者の意思をできるだけ尊重してもらえると嬉しいですね。本人は当然ショックを受けていますが、でも、根本的には「治して元の生活を送りたい」と思っているものです。そのためには、多少ワガママに思えるような意思決定を行うかもしれません。
私の場合は、「SNSやブログで病気を公表したい」と妻に伝えたことが一番の意思決定でした。これは、妻にとっては、「夫の病気が全世界に知れ渡ってしまう可能性がある」ということを意味します。妻自身はもちろん、子どもたちが何か不利益を被るリスクだってあるわけです。
それでも、「公表することで、モチベーションを高く持って治療したい」という私の意見を尊重してくれました。たとえが少し極端かもしれませんが、できるだけ自然体で、できるだけ本人の意思を尊重して接してもらえるだけで、罹患者は前向きに頑張っていけるのではないかと思うのです。
最後に、私が特に強く感じていたのは、家族の「存在そのもの」でした。直接的な支援を得られていない入院中などであっても、
「家族のためにも治療をやりきろう」
「諦めずに頑張ろう」
と思うことができましたから。
がんに罹患してしまった家族や親族をお持ちの方は、もしかすると、「自分がもっと支えなきゃ」と思われているかもしれませんが、その存在だけで十分罹患者側は救われているということを、まずは理解していただけたらと思っています。
逆に、「もっと、もっと」という気持ちが、かえって罹患者にとって重荷になってしまっているかもしれないということに目を向けてみてください。ありのままで良いのです。ありのまま接してあげてください。
そして、自分自身の心身をくれぐれもお大事にしてください。
(了)
回答者:花木裕介(一般社団法人がんチャレンジャー 代表理事)
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